練木先生 堤先生のピアノトリオ

私のアメリカでの恩師である練木先生と、同じ時代に同じインディアナ大学でチェロを教えられていた堤剛先生のトリオの演奏会があるというので、いそいそと東京まで出向いた。


ヴァイオリンは徳永次男さん。


三人とも日本を代表する演奏家であり、もはやそれぞれ「巨匠」と呼ばれても何の遜色もないほどの地位を築かれてきた方々である。


特に練木先生と堤先生の共演は、私にとってはインディアナ大学の学内コンサート以来20数年ぶりのもので、本当に楽しみであった。


あの頃は、毎日自分の練習に明け暮れていて、ゆっくりとした気持ちでコンサートを聴くなんてなかなか出来なかったが、それでも世界中から集まった有名な演奏家でもある先生方の演奏をたまに聴くことが出来、それはまさに至福の時であった。


今考えると、なんと贅沢な演奏会だったことか。


練木先生と堤先生は、あの頃よりももっとまろやかな、それでいて厚みのある豊かな音色でそれぞれの楽器を演奏され、「これぞ室内楽」と言えるほど美しい調和をホール一杯に響かせてくださった。


私の感覚も20年前に戻り、あの頃の舞台の情景も頭にも目にも甦ってきて、感無量であった。


音楽の素晴らしさは、特にクラシック音楽は、時代が変わっていっても、年齢や情景が変わっていっても、全く変わることなく感動を与えてくれる。


東京まで出向いて良かった。